オーガニック

Organic 2005

Losing Culture
25 Sep 2005
中国は雲南省と四川省の境界線上に位置する「秘境」濾沽湖(ろここ)。何世紀もの間、その湖上でモソ族の女性は愛人に捧げるバラードを歌っていた。しかし、今彼女達の歌声を聞くのはその秘境を訪ねる観光客である。今、彼女達はシーズン・ピーク時には一月$300.-の収入を得る事ができる。1990年代、彼女達の生活は貧しかったが、今では彼女達の子供は大学へも通っている。それを可能にしたのは秘境中の秘境と言われている濾沽湖を訪れる観光客たちだ。山々に囲まれた澄みきった湖とチベット・スタイルの窓雨戸とバルコニー。観光客を引き付ける魅力はその平穏な濾沽湖の美しさだけではない。そこに住むモソ族の社会構造が中国の他の54の部族とは異なった家母長制だからだ。
伝統的に、モソ族の女性はすべての家族問題に対する責任を持ち、女性たちだけが財産を相続する権利を持っている。中でも特徴的なのが、「通い婚」という結婚形態だ。これは男性が必要な時だけ妻のもとに訪れるという慣習で「アシャ(阿夏)婚」ともいう。「アシャ」とは、モソ語で「親愛なる伴侶」という意味。モソ語には「父親」を意味する言葉すら無い。カップルが成立すると、男性が金・銀・玉を贈り、女性は飾り物を返礼し、夫婦の契りを結ぶ。そして結婚後、男性は妻と共に生活する義務はなく、昼間は実家で暮らし、夜になると妻のもとへ行き、翌朝再び実家へ帰るという生活を繰り返す。
今、湖畔の村には部外者の投資による、お土産屋、バー、インターネットカフェ、マッサージ・ビジネスさえある。モソ族の若者の中には村を出て行き、部外者と結婚する者のも出てきた。観光事業によってもたらされたテレビやインターネットの影響は大きい。中国政府にふしだらな行為とみなされたモソ族の性習俗もいつかは消えてゆくのか・・・