オーガニック

Organic 2006

Transgender : Nicholas to be Nicole
春休みの朝11時、アンダーソン(偽名)家の様子は一見普通の家庭と変わらない。子供達は広い家の中でボールを投げ合い、2階にいるプリティーンの娘は母親の声が聞こえないふりをしている。適度に日焼けをした身なりの良い専業主婦のローレン・アンダーソンさんは子供達に静かにするように言い聞かす。そんな中、上品なおさげ髪に、爪を虹色に塗った5才になる最年少のニコルはプールに行く準備をしながら眉をひそめている。
ニコルはピンクのホルター・ネックを引っぱりながら母親に言う。「これちょっと小さいの。ちがう服にして!」彼女は水着の履き心地が気に入らないらいし。数分後、ニコルはパンツ一枚で家の中を駆け回っている。そんな服を着ていない彼女の姿からはパンツの中にペニスをしまい込んでいるのがはっきりと見える。ニコラスと命名されて男の子として生まれたニコルは今、少女の服を着て少女のように行動する。
彼女は言葉を話すようになってから自分は女性だと言い張り始めた。「彼はいつも花や明るい色、バビー・ドールや最愛のマーメイドに魅せられていた」とローレンさんは男性名詞を使って語る。事実、少女としての生活をサポートしている母親の話からはニコルに対する迷いが聞き取れる。小さい男の子が人形と遊ぶ時期があることは普通だが、自分を異性だと考える子供は稀である。この問題にどう対処するのかは、ここ何十年も討論されてきた。その間にもニコルは毎日少年時代の面影を少しずつ削り落しいている。
「私は私心をまじえないよう努力しているが、何の効き目もない」「クロゼットから毎日ゆっくりと、新しい服が一枚、また一枚と出てくる。 そして、彼は少女になってゆく」とローレン さんは言う。
ニコル自身の性は決まっている。しかし、GID(Gender Identity Disorder)性同一性障害の話になると解決する術がほとんどがない。1973年まで、同性愛は精神障害としてDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)精神障害の診断と統計マニュアルに記録されていた。そして、それは精神医学界の熱烈な討論の末に取り除かれ、同時に多くの性転換者はGIDは却下されるべきであったと信じている。
少女になりたがっている5才の少年に性転換が正しいと言う者は極少数だ。コロンビア大学の精神医学の教授はこれについて3つのタイプがいると言う。一つは常に厳しく行動を修正しようとする人。そして、最初から強く性同一性をサポートする人。最後に高みの見物をする人だ。
セラピストは子供が異性として生活することを思いとどまらせられるべきであると強く主張する。さもなければ、多くの場合ゲイとして成人するからだと言う。何百という性同一性障害の子供を治療してきたトロント大学の心理学者ケネス・ザッカー(Kenneth Zucker)氏は子供が性倒錯を受け入れる前にセラピーを経験することによって80%から90%は修正できる研究例を示した。
この秋、アンダーソン夫妻はフロリダ州のブロワード・カウンティー(Broward County)でニコルを少女としてプレスクールに登録することを計画している。
5 Jun 2006