オーガニック

Organic 2009

A Shrine of Love
そこは典型的なニューヨーク・アパートメントの地下の一室。週末になるとパキスタン北西部の故郷ブナ・ヴァレイ(Buna Valley)の厳しい環境を想像させるメロディーが流れてくる。
そこに集まる人たちはここを「A Shrine of Love」(愛の神殿)と呼んでいる。そこはタリバンの脅威から逃れてきたミュージシャンたちの仮のスペースだ。
彼らにとって母国からのニュースは悪いものばかり。ペシャワールの警察によればパシュトゥー語のシンガーShamim Aiman Udhasさんが歌うことを止めないとして、彼女の兄弟によって射殺されたという。今パキスタン北西部の60%以上はタリバンの支配にある。
そんな故郷から逃れてきたシンガーの一人Haroon Bachaさんは「歌を止めろ」という脅迫電話や手紙に危険を感じて合衆国に来た。国外に脱出できないミュージシャンたちの多くはタリバンからの脅迫を恐れて引退を余儀なくされている。
合衆国に来て8ヶ月、Haroon Bachaさんは故郷に残した家族を気遣い公の場では話をしない。実質的に亡命者となった彼の音楽にはその苦悩が感じられる。最近彼は国に残した息子と話した。彼の息子はアメリカに行くために1,000ルピー(約13ドル)を貯めたという。
ニューヨークで彼はいまパキスタン北西部の故郷を思う気持ちを歌にしてコレクションをまとめ上げた。しかし、それらをレコーディングする機会もお金もない。ただ、心に刻み込むために「A Shrine of Love」に通うのである。
5 May 2009