オーガニック

Organic 2009

Traditional music
ワールドミュージックというジャンルができて20年、それまでは英語の歌詞が主だった世界の音楽が今私たちの周りにあらゆる言語であふれるようになった。しかし、そんな流れとは逆行するようにある地域の伝統音楽は存続することが難しくなっている。
アフガニスタンのカブールで伝統音楽を教える音楽学校を経営しているナシル・アミリさんはそんな流れを食い止めようと努力しているミュージシャンのひとりだ。
「私たちは子供達にルバーブ(アフガニスタンの伝統的な弦楽器)やタブラ、ハーモニウム(19世紀にインドから伝わったポータブルキーボード)などといった楽器を教えます。さらに古典音楽を歌うことも勉強している」と語るアミリさん。兄弟で運営している彼の学校には現在6人の生徒がいるが、「今の子供達には伝統音楽を学ぶ辛抱強さが足りない」と嘆く。
現在カブールには幾つかの音楽学校があるが、そのほとんどがアミリさんの学校のようにお金を儲けるためのものではない。授業料を支払う余裕のない子はただでレッスンを受けることができる。アミリさん兄弟は父親から音楽を教えられた。父親の死後、彼らはその音楽を継承しなければならないと強く感じたという。
アミリさん兄弟はいままで結婚披露宴などで伝統音楽を演奏して生活してきた。しかし、ポップミュージックの広がりで彼らもそれに順応しければならなくなった。タリバン政権下で12年間パキスタンに逃れている間にアフガニスタンの伝統音楽は封印され、その後タリバンが追放されてからは各国の物理的支援の影に伝統的ライフスタイルが無視されてきた結果である。
今、街には細かく装飾された伝統楽器を売る店が一軒残っている。ミュージシャンでもある店主は1日に楽器を1つ売るのも大変だという。「これらの楽器はすべてカブールで作られたものだが、だれも興味を持たない」「ポップミュージックには合わないからね」と店主は語る。
この国が直面している貧困などの多くの問題を考えれば伝統音楽の復活などは二の次なのは理解できる。しかし、たとえ大衆が伝統音楽よりもポップな音楽を好もうとも、新しくできたテレビ番組が流している音楽に何か物足りなさを感じるのはアミルさんたちだけではないだろう。
11 July 2009