UEFA EURO 2008

Tribute to the Iceman

初めてオランダ・リーグの試合を観に行ったのはアムステルダムのオールド・スタジアム(De Meer)だった。
1986年秋の午後、FCデン・ボッシュは2-1とアヤックスを追いかけていたときである。ヤン・ボウタースが入れたチップ・ショットにマルコ・ファン・バステンがバイシクル・ショットでスーパー・ゴールを決めた。そのときのファン・バステンは空中に静止しているかのように正確にボールを捕らえ、ゴール・ネットのコーナーを揺らした。
ヨハン・クライフに率いられたアヤックスはそのシーズンのUEFAカップ・ウィナーズ・カップを制し、ファン・バステンはACミランへと移籍して行った。アヤックスには代わりにマンチェスター・ユナイテッドからフランク・スタプルトンがやってきたが、あのFCデン・ボッシュ戦の4週間後、ホームのローダJC戦で初めてベンチ入りした青年がいた。デニス・ベルカンプである。彼は新しいチームメイトと握手を交わし、後半から途中出場。以来インテルに移籍するまで、6年以上アヤックスの中核を担った。
先の5月に引退したベルカンプは「ファン・バステンとは全く違うよ。マルコはもっと深くプレイしていた」「ぼくはゴール・ハンターと言うより、アシストに近い」と語っている。1991年、ルイ・ファン・ハール監督はベルカンプを影のストライカーとして起用し、MFヴィム・ヨンクと共に当時のアヤックスの中で双児のように息の合ったプレイでゴールを量産させた。
しかし、その後インテルに移籍したベルカンプとヨンクは活躍できなかった。チームがプレッシング・ゲームをすることで機能する二人はインテルの防御的なシステムを変えられなかったのだ。彼らが在籍したシーズン、インテルはUEFAカップを勝ち取ったのみに終った。その後、ベルカンプはアーセナルのマネージャー、ブルース・リーオクに救われる。
新天地ハイバリーでベルカンプはときに「God」と呼ばれ、ボールに対して常に冷静であることから「Iceman」とニックネームをつけられる。次のプレイを考えての絶妙なファースト・タッチは正に神だった。「ロング・パスを受けて、一方の足からもう一方の足へ、空中でボールをキープしながらそれをコントロールしてフィニッシュまで持って行く」「要するに巧みなタッチだ。常にそのことを考えていたよ」とベルカンプは振り返る。
19 Jul 2006

ワールドスポーツ

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