FIFAワールドカップ2006
Flawed Genius
- フランス代表キャプテン、ジネディーヌ・ジダン 2,012票、イタリア代表DFファビオ・カンナバーロ 1,977票、同じくMFアンドレア・ピルロ 715票。
- ジダンが最優秀選手に輝いた。しかし、その目に喜びの輝きはない。ワールド・カップ決勝戦、最後の晴れの舞台になるはずだった試合で退場したジダン。イタリアが優勝トロフィーを上げて沸き立っているスタジアムのロッカールームで、彼はひたすらチーム・メイトとスタッフに謝罪していた。
- ジダンがマルコ・マテラッツィに頭突きをくらわしたのを主審は見ていなかった。副審も見ていない。見ていたのはGKブッフォンと一部の観客だけ。第四審判が確認した映像もフランスのサポーターを考慮してスタジアムには写し出されなかった。そして、ジダンは退場した。
- 翌日、ジダンの代理人はマテラッツィに屈辱的暴言を受けたと発表。それでも、その夜にジダンの経歴に傷が付いたことには変わりない。ジダンはフットボールをするときのように、自分の気持をコントロールできなかったのだ。
- 「戦いを決して諦めない。それが自分が育ったところで学んだこと」と、マルセイユの貧困地区でアルジェリア移民の子として育ったジダンが語った事がある。アルジェリア代表監督には遅いと言われ、少年期の憧れだったマルセイユでも十分とは言われなかった。カンヌ、ボルドーでチャンスを得てユベントスへ。その間、何度も失望したが、1998年フランス大会での優勝で全てが取り消された。
- そのフランス大会、グループ・リーグのサウジアラビア戦でジダンはキャプテンのファド・アミンの足を踏んだとして、2試合の出場停止処分をうけた。当時のフランス代表キャプテンのデシャンは「彼の地中海気質は常にコントロールできるものではない」と語っていた。ジダンは「このようなことは二度と起こさない」と謝罪し、決勝の2ゴールでその件は吹き飛んだ。
- ユベントスでの最後のシーズン、ジダンはチャンピオンズ・リーグのハンブルガー戦でも相手DFヨヘン・キーンツに頭突きを入れて5試合の出場停止処分を受けた。そして、それもユーロ2000でのフランス優勝で忘れ去られた。
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ジダンにはもう次の試合はない。日曜の夜の出来事は忘れられることはないだろう。伝説のプレイヤー、ミシェル・プラティニと同じレベルに置かれることもないだろう。それでも、その試合は数々のスーパー・プレイを見せてくれた一人が人間の弱点をも見せた試合として最後の思い出になる。
10 Jul 2006
ワールドスポーツ
サッカー大好きな人のためのワールド・スポーツ情報。ニューヨーク、ロンドン、アムステルダムからのレポートを中心にお伝えします。